美術館について

 私は30数年前から田村耕一先生の作品に心惹かれ、感じるままにひとつずつ集め始め気が付くと、いつの間にか多くの作品に囲まれて、日々暮らしの中で田村作品に触れることとなりました。

 そのなかで田村耕一という陶芸家の作品を見はじめた頃には、まるで見えなかった先生の作品に対する造形とデザインに込められた想いを垣間知ることで、新たな感動に浸ると共にその高い芸術性に再度心を奪われたのです。

 初期の作品から中期、そして晩年へと創り出す作品の大胆な変遷にも驚嘆させられますし、又その中に描かれている身近にある花などをデザイン化して表現する一連の田村先生の焼物は私達に大変親しみ易くとても身近に感じられます。

しかしながらその作品は実に奥が深く 筆ひとつの運びをとりましても「田村耕一ならでは」と言える独特の筆致と簡略化されたモチーフを独自の形の中に調和させながら、まるで何事も苦労が無かったように悠然とした作品として次々と展開して行くのです。

 そこで私は「私達に大きな安らぎを与えてくれる作品を独り占めするのではなく、多くの人にご覧いただけるように収蔵の場を造り 見ていただけたら良いのではないか」と思い館といたしました。

田村耕一の「鉄絵」は世界に誇れる日本ならではの陶技ではないか、と私は思うのです。そのここち良い独創の鉄絵陶芸の美を皆様と共に楽しめたのなら、この上ない喜びでもあります。

一般財団法人 人間国宝田村耕一美術館 館長

島田文男


美術館内観